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梅屋とおじさんとトウモロコシ [楽]

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今宵は中秋の名月だそうですが、「時を戻そう」、七夕のお話です。
七夕というと織姫彦星、天の川、笹の葉、願い事を記した短冊を庶民は連想するでしょうが、私の場合は違います。七夕というと焼きとうもろこしが脳裏に浮かぶのです。
私が中学生だったとき、友人たちと平塚の七夕祭りを見に行きました。仙台ほどではありませんが、平塚の七夕も首都圏では有名です。一学期の期末試験を終えて弾けたかった私たちは乗りなれない湘南電車を利用し平塚駅に降り立ちました。まずは腹ごしらえ、でも当時はマックなどまだありません。会場に沿った飲食店は混んでいて入店は不可能と考えた私たちは、会場の中ほどにあるデパートの屋上に向かいました。屋上に行けばビアガーデンがある、そこでは腹のたしになるものが必ず提供されているに違いないと考えたのです。まだ日も暮れていなかったため、ビアガーデンにはサラリーマンなど当然いません。七夕会場である通り沿いの混雑が嘘の様にそこは閑散としていました。中学生の身ですからカウンターを陣取りとりあえず「大生=ダイナマ」というわけにはいきません。周囲を見回すとビアガーデンの一角でとうもろこしを焼いているおじさんを発見しました。地元のお祭りで体に施された威勢のいいデザイン画を誇らしげにチラ見せしながら焼いているガタイのいいお兄さんではありません。多分普段は階下のどこかの売り場で接客しているデパートの社員さんでしょう。クールビズなどというワードなどない時代です。暑さと熱さに耐えながらもおじさんはネクタイを締めていました。私たちは迷わずおじさんのもとに行きオーダー。すでに焼きあがっていたとうもろこしを再び網にのせ醤油をぬります。独特の香ばしい匂いに私たちは陶酔状態。焼きあがった一品をそれぞれうけとりテーブルに向かいます。私はブツを受け取り、歩きだすと同時に我慢しきれずにそれを口元にもっていこうとしました。次の瞬間、私の手からとうもろこしが離れていったのです。鈍い音をたててコンクリートの床に落下しました。友人たちは「もったいねー」といいながら大笑いしています。3秒以内に拾って拭けば食べられたかもしれません。呆然と立ち尽くす私に、背後からおじさんが声をかけてくれました。「とりかえてあげますよ」。おじさんに後光が差していたような気がしました。その日の七夕祭りの会場がどんな七夕飾りで覆われていたかなど私にはまったく記憶がありません。でも七夕ときくと平塚のデパートの屋上で食べたネクタイを締めたおじさんが焼いてくれたとうもろこしを思い出すのです。
先日、七夕の主人公である織姫と彦星は実は夫婦だったということを知りました。私も含め大多数の人は恋人同士だと錯覚しているそうです。働き者だった二人が結婚した途端、結婚生活が楽しくて働かなくなったため、天の川を隔てて引き離され、年に1度だけしか会うことが許されなくなったというのが真相だとか。そしてもうひとつ、後光が差していたおじさんの働いていた平塚のデパートは数年前に閉店してしまったそうです。今年はコロナの影響で平塚の七夕も中止、来年は以前にもまして華やかに開催できることを願います。

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