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たかが朝食されど朝食 [旅]

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プライベートな旅行であってもお仕事優先の出張であっても、宿泊先が旅館であれホテルであれ、現地での朝食は私にとって楽しみのひとつです。
いちいち唸ってしまうような柄や形の器、それぞれの器に配された家庭では製作不可能であろう季節を感じさせる美しい彩りのお料理の数々。朝からこんなに食べられないと思っていたのにそれらをきれいさっぱり胃袋に収めた後の爽快感。食洗機は使用できないような器もあるので料理長の下で働く人たちはこれからがまさに戦場(洗浄)に違いない、ご苦労様と思うのは一瞬です。ホテルのバッフェなら最後に食するフルーツやデザート類の品揃えをまずチェックした後、スクランブルか目玉焼きか、ベーコンかソーセージか或いは両者かと、贅沢な選択プラス綿密に量を判断しつつ手にしたお皿に盛っていく楽しみ。摩天楼に占拠された四角く小さな空を見上げながら、鏡を置いたかのごとく静かに拡がる湖面を眺めながらなど、気ままな姿で食べられるルームサービスによるブレックファーストも幸せを感じさせる時間です。楽しみな朝食ですが苦い経験もあります。イギリスの静かな村の部屋数も僅かなホテルでのこと。私はその日の昼過ぎまでに不慣れなマニュアル車を運転してロンドン空港まで戻り次の目的地を目指さなければなりませんでした。ルームサービスでちゃちゃっと済ませたいところでしたが小さなホテルだけにそれは不可能。ホテル内のレストランに行くと飲み物から卵料理、デザートにいたるまで何種類かが記されたコースメニューが置かれているではありませんか。さらに最初にすべてを尋ねればいいのに儀式を重んじる大英帝国のなごりでしょうか、おめかししたギャルソンが頃合いを見計らって都度テーブルにわざわざオーダーをききにくるのでした。こちらはデザートまですべて一緒盛りでもよかったのですが時間差で別々にゆっくりと供されます。次の目的地に向かう飛行機は私の搭乗便以降はすべて満席とわかっていたので、スーツケースに座り込み、空港の片隅で途方にくれる私の姿が脳裏に浮かびました。それでも美味しさは時の経過を忘却の彼方に追いやり副菜もデザートもひとかけらも残さずきれいに平らげましたが。
幼い頃、親戚の家にお泊りした翌朝のごはんも美味しかった記憶があります。何が美味しいというのでなく同じ生卵でも漠然と美味しかった気がするのです。多分、我が家とは違った器で供され、我が家とは違う風景の中にいたからではないでしょうか。視覚によるトリック、錯覚といえるかもしれません。スキー場で素敵に見えた異性に都会で再会してみると「あれれっ?」と思わせるゲレンデマジックと同じなのかも。でも旅館やホテルの朝食は決してマジックではないはずです。

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