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アフタヌーンティー [怒]

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ターナーの絵に描かれているような雲が澄んだ青空の中に気持ちよさそうに横たわっていました。ちょっと視線を落とせば日比谷通りを小さなバスや車が行き交い、通りと並行するお堀の水面は鏡のように静かで表情の乏しい高層ビルが映りこんでいます。
映画鑑賞を終えた私と奥さんは、優雅にアフタヌーンティーを楽しむべくホテルのラウンジにいました。さすがに日本を代表する伝統と格式のあるホテル。分厚い絨毯に消音効果があるのでしょうか、満席ではあっても私たちの席からも見える外資系ホテルのラウンジのような喧噪とは無縁です。オーダーを取りにきた女性スタッフも私たちのメニューに対する素朴な質問に親切・丁寧に答えてくれました。ほどなくして紅茶とコーヒーがサーブされたのですが置かれた場所は逆。ジェントルマン然とした風貌からして私が紅茶を好むということがわからないのでしょうか。その後しばらくダージリンの香りを楽しみながら優雅な昼下がりを過ごしていたのですが、ティースタンドにサンドイッチやケーキ類がたくさん載せられたメインがいつまでたってもでてきません。でもイギリスで生まれたアフタヌーンティー、慌ててはいけない、いずれ出てくるからこちらものんびりと待つことにしたのです。しかし15分、20分たっても目の前には二つのカップとティーポットがあるだけ。奥さんのコーヒーカップはすでに空っぽ。ターナーの絵のような雲はどこかに消えてしまい、邪悪な形の雲が私たちを嘲笑しているようでした。普通の人ならこの時点で、いやもっと前に「すいませんメインはまだですか」とスタッフに声をかけるでしょう。しかしそうしないのが私たちの底意地の悪さ。奥さんは「忘れられているに違いない」とご立腹。でも「催促したら」とは言わず「帰ろう」というのです。人間空腹になると苛立ちます。もう絨毯の分厚さも癪の種なのです。しかしここで帰るのも中途半端。私たちはタイムリミットを定め、もしかするとサーブされてしまうかもしれないメインをひっそりと待つことにしたのです。タイムリミット間際は、まるでオークションで落札できるかできないかやきもきする最高値をつけている客のようでした。スタッフの近付く気配がすると「あー、きちゃたのかー」と落胆するのですから。でも結局入店から50分経っても私たちのテーブル上でアフタヌーンティーとやらの姿をみることはありませんでした。
帰り際にキャッシャーで尋ねました。「アフタヌーンティーは通常どのぐらいででてくるのですか」「10分から15分、混雑していますともう少々」「50分待ちましたが出てきませんでしたよ」「申しわけありません。お代は結構です」。エレベーターに乗ってからさらに不愉快になりました。50分待ったけどその後サーブされたメインも平らげた上で、精算時にいちゃもんつける無銭飲食常習の夫婦だと思われたのではないかと。帰宅後私たちを楽しませてくれた放置プレイの感想を記したお手紙を書きました。総支配人様宛に。意地悪夫婦の食べ物の恨みは恐ろしいのです。

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