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麻布十番のきみちゃん [ほっこり]

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数年前、すでにまだら呆け状態にあった父のリクエストに応じ、父が幼少時代を過ごしたという麻布十番を訪れました。当時70年以上前の商店街の様子を克明に話す父に驚くとともに、昔のことほど覚えているという認知症の真髄を知らされたものです。別に父のルーツを探ろうとしたわけではありませんが、その何年か後、久しぶりに麻布十番を訪れました。
六本木ヒルズの誕生以降注目度を増した麻布十番界隈。商店街に点在するマスコミで紹介された店々の外には長い行列ができ、狭い歩道は人であふれかえっていました。欧米か?と錯覚させるブディックやカフェがあるかと思えば、生活臭漂う昔ながらの店構えの八百屋さんやふとん屋さん、銭湯まであるのです。道端では制服姿の男子高校生たちがある一点を指差して大騒ぎしています。場所柄、著名人を発見したのかと指差す方向に視線を向けると、黒塗りピカピカのロールスロイスファントムから、法とは無縁の世界で生きていらっしゃると一目でわかる御仁が降り、中華料理店に入ろうとしているところでした。普通あの手の方々を指差すなどできない芸当ですが、さすが父の育った麻布十番の子、別け隔てなく人と接しているのでしょう。御仁もベンツでなくロールスロイスというところがセレブです。一方、商店街を外れてちょっと坂を登ってみると、下界の喧騒が嘘のような静けさ漂う邸宅街が広がり、豪邸やら低層のアパルトメントが連なっていました。そうした高所得者層が背後で生活しているのだから物価もさぞ高いのだろうと思ってスーパーに立ち寄ってみれば、私の地元と価格差はなし。逆に安い生鮮品だってありました。もちろん、格差社会を好む顧客向けのスーパーもちゃんとありましたが。「山の手の下町」麻布十番を形容するにこれ以上の表現はないでしょう。
横浜の山下公園に「赤い靴履いてた女の子」像があります。野口雨情の詞からもあの子は異人さんに連れられ遠い国へ行ったと思っている人が多いかもしれません。でも女の子は船に乗っていませんでした。その女の子の母親から、かつて3歳の我が子を外国人宣教師夫妻の養女に出したという話をきいた雨情がイメージして童謡「赤い靴」は生まれたようです。では真相はというと、その女の子「きみちゃん」というそうですが、実際に外国へ旅立とうとする直前、不治の病にかかり宣教師夫妻は連れて行くことを断念。6歳になったきみちゃんを泣く泣く孤児院に預けて帰国。その後、薬石の効なくきみちゃんは9歳で天に召されてしまったというのです。その孤児院のあったところが麻布十番。麻布十番商店街の裏通り沿いの小洒落た公園に建つ「きみちゃん像」を見て私はその真実を知りました。父が生きていればその孤児院のことをたずねたかったのですが。

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