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ボートンオンザウォーターの惨劇 下巻 [旅]

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携帯灰皿はあきらめるしかない。これを機に煙草をやめればいい。と私は言った。しかし奥さんはあきらめない。靴も靴下も脱いで川に入れば容易に取ることができることはわかっている。しかし灰皿ごときをとるために私がそんなことをする必要もない。まして川に入り込んでいる私を住人に見つけられたら、東洋人が鴨を生け捕りにしようとしていると通報され、駆け付けた警官に逮捕されて国際問題に発展する可能性もある。私はもうこれ以上何もしませんよという意思表示をした。すると奥さんは少し下流に行き川べりにしゃがみこんだ。どうやら川の中に手を突っ込み流れてくる灰皿をキャッチするつもりのようである。川べりの舗道と川の間は少し傾斜しているので安定が悪い。奥さんは片手を差し出し私におさえていてという。どうやらバランスを崩して川に転落することを防ぎたいようだ。それとも川に落ちるときは道連れにしてやるという魂胆だろうか。差し出してくる手を払いのけ、しゃがんでいる奥さんを軽く足でければ彼女だけ川に転落させることもできる。そうなればかつての三浦某氏のように妻殺しの嫌疑をかけられ帰国後はマスコミに追い回される日々が続くのか、犯行がばれなければ携帯灰皿を拾おうとして転落したなどと言わず、けがをしていた鴨を救おうと手を差し伸べたところバランスを崩した、と作話すれば旅先で妻を失った悲劇のご主人として国民の涙をさそうことになるのだろうか。だが転落しても深させいぜい30センチ。溺れ死ぬこともないし、そうなったとしても巨額の保険金が入るわけでもない。いろいろ妄想しつつ私は奥さんの手をしっかりと握っていた。川の中ほどに流されることもなく、なんとか手の届く川べりに灰皿が流れてきた。これを逃したらあきらめるしかない。絶妙のタイミングで奥さんは川に手を入れた。そして奥さんは大事な携帯灰皿をキャッチしたのである。
私たちは鴨の密猟者として地元警察署で冷たいパンを食べ、生温かい牛乳を飲むこともなく、ホテルで豪華な朝食にありつけることができた。水辺で大事なものを扱うときは細心の注意を払うべきできである。私たちが12年前、銀婚旅行で訪れたボートンオンザウォーターで学んだ教訓である。

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