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許しの秘跡 [何か変]

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すでに時効ですから懺悔します。中学時代のお話。私は自宅で勉強机に向かっていました。予習復習には縁のなかった私のことですから、多分中間や期末試験を控え深夜放送でも聴いていたのでしょう。机上にあった小さなメモ帳に触れた瞬間直感したのです。「この紙の感触、何かに似ている」謎を解くのに時間はかかりませんでした。
私はKバスの回数券をとりだし紙質がほぼ同じであることを確認。さらに極細のブルーのサインペンを取り出しました。メモ帳に試し書きしてみるとインクの色もまったく同じ。私はちょっとやってみようかという気になってしまったのでした。勉強以外での集中力は病的だった私。加えて手先の器用さはベトナム人なみ。メモ帳が小さいため、11枚綴りの新品の製作は不可能と判断、1枚のメモ帳に3,4枚程度を作成したと記憶しています。本物を横に置き、定規を使って慎重に正確に模写したのです。インクのにじみもなく、素人には絶対に見分けがつきません。作品を制作する過程で私はアーティストとして妙な満足感を得ていました。裏面も描き、最後に切り取り用のミシン線を丁寧にいれ完成。多分1枚10円券か15円券、それを3,4枚製作するのに朝までかかったのではないでしょうか。それほど細かい作業だったのです。私は親にみせてみようと思い、その回数券を居間のテーブルに置き、試験のことも忘れて短い眠りにつきました。ところが朝起きるとその回数券がみつかりません。朝寝坊だった母はその存在すら知りませんでした。出勤前にネクタイ締めて掃除機をかけることを日課としていた父が捨てたに違いありません。私の努力の結晶を簡単に処分した父親を呪いました。連日帰りの遅かった父に何日後かにようやく会ったとき、あの回数券をどうしたのかと訴えると信じられない答が返ってきたのです。「使ったよ」。あれは私が作った偽回数券だと父に告げると、「そんなことは知らない。使っちゃったんだから」とまたまた思わぬ回答が。その後、新聞に「Kバスで偽造回数券発見、背後に巨大犯罪組織か」という報道もなく、我が家に警察が踏み込むこともなかったことはラッキーでした。もちろん父から偽回数券の追加発注もありませんでしたが。
高校に入って私はKバス同様地元を走るEバスで車掌のバイトをしました。当時のバスにはまだ車掌さんが必ず乗車し、次の停留所名を告げたり、踏切ではバスから降りて誘導したり、走行中の車内で乗車券や回数券を販売したりしていたのです。私はそこでも罪を犯しました。でもそのことはいくら時効だからといって懺悔することはできません。回数券偽造も犯罪でしょうが、自分ではいたずら半分の感覚。しかしこちらは完全な犯罪行為と認識しているからです。Eバス株主の皆様には深謝します。でも半世紀経った今もそのバス会社は健在。私の犯罪も大勢には影響なかったのでしょう。

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