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あゝ無情! [何か変]

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数年前の銀婚旅行の際、私たちはロンドンでミュージカル「レ・ミゼラブル」を観ました。開演間際、奥さんの隣席のロンドン郊外からきたという20歳前後の英国人レディーが終演時間を尋ねてきたのですが私も定かではありません。10時前後ではと適当に答えておきました。その後彼女は奥さんにあなたのご主人はフランス人かときいてきたそうです。
ロンドンからフランスのリヨンまでの移動に英国航空を利用しました。フランスへ行く便ですからロンドンの空港でも当然搭乗開始を知らせるフランス語での案内もあるのかと思っていたのですが英語のアナウンスのみ。それは機内でも同様でした。午後4時発のその便はほぼ満席。私たちが機内に乗り込むと3列シートの窓際にはシンガーであり女優でもあるビヨンセ、あるいは記録達成から20年を経た今でも陸上女子100m、200mの世界記録保持者であるジョイナーにも似た黒人女性がすでに座っていました。定刻通り機はターミナルビルを離れ滑走路の端に移動を始めましたが、成田空港の二倍以上の発着機があり、世界一忙しい空港といわれているだけにすんなりとは飛び立つことはできません。窓際の女性は外を眺め感傷にふけることもなくファッション雑誌を読んでいました。さすがツアーで世界を駆け巡るビヨンセ、旅なれているのでしょう。やがて機内に英語で離陸を告げる最終アナウンスが流れました。それだけです。フランス語放送はなし。日本語放送などもちろんありません。この便には私たち日本人以外、英国人しか乗っていないの?でも窓際のビヨンセ兼ジョイナーはアフリカ系のフランス人に違いないと私は思っていたのですが。英語のアナウンスを理解したのか、フィールドを疾走するチーターのような動物的な勘で離陸を察知したのかジョイナーが十字を切りました。ここで私の脳裏にひとつ疑問が浮上したのです。キリスト教徒なら十字を切る、手を組んで祈りをささげる、日本人なら掌を合わせて拝む乗客もいるでしょう。ならばイスラム教徒はどうするのでしょうか、離陸時はシートベルトを締めなければいけませんからから、床にひれ伏しメッカ(今はマッカが正式呼称とか)に向かって祈りを捧げることもできないはずです。何か簡易的な祈り方があるのかもしれません。2時間弱のフライトを終え機は着陸態勢に。機内放送でキャビンアテンダントがリヨンの現在の時刻と天候を知らせました。完全にフランス領空なのにアナウンスは英語だけで終わったのです。着陸後もAu Revoir(オルヴォアー=さよなら)のひとこともありませんでした。さすが長い歴史の中で百年にもおよぶ争いを展開したこともある英仏両国、敵国に屈してたまるかという自国に対する自信と誇りの表れなのでしょうか。
いまだに存在する英仏の冷めた関係の事実を知りロンドンの劇場にいたレディーの発言の真意がわからなくなりました。私の風貌がフランス人っぽかったのかと勝手に解釈していましたが、もしかすると彼女にとって最高レベルの侮蔑の表現だったのかもしれません。あゝ無情!

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