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続・脳裏に焼き付くお言葉 [ほっこり]

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誰でもひとつやふたつ忘れられない言葉というものがあるはずです。
50年連れ添った伴侶を亡くした私の父は、ひとり身になった後もしばらくはなんとか従前通りの現役生活をおくっていましたが、半年後には体調を崩してしまい家から出ることがなくなりました。それでも書くことも仕事の一部であった父は、家の書斎に陣取り鉛筆を握って原稿用紙を埋め続ける日々をおくっていたのです。しかしその内容は次第に支離滅裂に。ついには第一線から完全に退くことを余儀なくされたのです。すべての仕事から解放された父は家でボーッとしていることが多くなり、すぐに痴呆の症状も見受けられるようになってしまいました。あっという間の父の変貌ぶりに私たち家族も驚いていたある晩のことです。独りで歩くこともままならなくなっていた父を寝床に誘導し布団をかけた後、私の長男、つまり父にとっての孫が高校に合格したことを告げました。
その時、「よかった、よかった。最近いいことがなかったからなあ」 父が天井を見つめながら嬉しそうにひとことつぶやきました。私にとって脳裏に焼きついて離れない言葉のひとつです。呆けたように見えても自分や周囲の状況は、正確に把握しているものなのだと私自身感動したからかもしれません。それから4年の歳月を経た冬の終わりのある日、私の次男が高校に合格したことを父に告げました。しかし、寝たきりの状態になっていた父は表情ひとつかえることはありませんでした。何もしない、何も考えない状態が続くと誰でも、周囲の状況など気にしないばかりか、喜怒哀楽もなくなってしまうのでしょうか。それとも喜怒哀楽を忘れると、何もする気がおこらず周囲の状況がわからなくなっていくのでしょうか。
長男の高校合格を告げた後の父のつぶやきは、私の心の琴線に触れる言葉だったから記憶に残っているのでしょう。一方その逆に心にいつまでも残る深く傷つけられた言葉が存在することも事実です。私の場合、相手の心に永遠に残るであろう印象的・感動的な言葉を発した記憶はありませんが、相手を奈落の底へ突き落とすような、あるいは相手の逆鱗に触れる暴言は数多く発してきたと思われます。

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