SSブログ

ある10月の海岸にて [楽]

White_1.jpg
普段なら人影もまばらな夕闇の海岸でイベントがありました。テントの下では自作のアクセサリーやインテリアグッズを販売する店がならび、10月だというのに半袖ですごせる陽気も手伝い会場は予想以上に賑わっていたのです。
屋外イベントでは定番といえる焼き鳥をはじめ、タコス、タイ料理といったエスニック料理を提供するトラック、浜辺にマッチするコロナビールやモヒートなどの飲物を販売する車もでていました。中央のステージ上では海岸沿い住民の非難を無視するように大音響で打楽器だけのアフリカンミュージックを聴かせるバンドが熱演。ステージ前ではそのバンドの身内と思われる人たちが狂喜乱舞しています。私と奥さんもステージ前のテーブルを確保しコロナビールを片手にアフリカ音楽とやらを呆然と聴いていたのです。そこに結構若い格好をした親父がやってきて同席してもいいかとジェスチャーでたずねられました。こちらは「だめだめ」と手を横に振る理由もないので軽くうなずいて同意。席につくなりその親父、尻のポケットからスコッチのポケットサイズ瓶を取り出しキャップを開けて口にしたのです。「地の人だろうか洒落てるねえ」と私は思いました。その親父をどこかでみたような気はしていたのですが話をきいてびっくり。なんとロンドンオリンピックの日本選手団の制服を受注、手掛けた人だったのです。それ以前何回かのオリンピックはファストファッションメーカーなどが無償で提供してきたが、体にフィットしていないので移動の飛行機の中でリラックスできないなどと不評だったため、前回からかつてのように選手各自採寸してあつらえることにしたのだそうです。「五輪選手団の制服受注は名誉だけで儲けにはなりません」とこちらも納得する発言も。そればかりか親父は外資系を含め有名ホテルのユニフォームもほとんど手がけたとかで、かつては横文字の名のホテルの仕事はすべて取れと激を飛ばしていたそうです。昨今のホテルのサービス低下についても私とほぼ同意見。私が雑誌とかに載られたことありますよねえとたずねると「業界誌だけですがね」との答えが。こちらも興味があるのでホテル関係の特集が組まれた雑誌には目を通しているのできっとどこかで目に触れたことがあるのでしょう。
見た目は若作りですが満州生まれといっていたので私より年上のことは間違いないであろうその親父、音楽が止むと「思いがけず楽しい時間が過ごせました」との言葉と空になったポケット瓶(スコッチでなくニッカでしたが)を残し漆黒の砂浜にひとり消えていきました。帰宅後早速会話中にきいた親父の名前を検索してみましたがヒットしません。ロンドン五輪制服で検索してもだめ。制服を受注したのは大手百貨店でデザイナーも別法人の若い人。とすると親父はいったい誰?長年蓄積してきた様々な知識をあたかも自分の経歴のように語るなりすまし人間?でも誰も傷ついたわけではありません。私も話をしていて面白かったし。やっぱり洒落た親父です。

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

伝言板ミルクティーとビスケット ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。