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間抜けなテロリスト [旅]

DSC_8249.JPG911のアメリカ同時多発テロ発生以前、アメリカの税関がまだぬるかった時代の話です。ロサンゼルス空港でのこと、出国の際、私は預けるスーツケース2個を検査のためベルトコンベアーに載せました。私の荷物がゴムのカーテンの向こう側に消えてしばらくすると赤いランプが点滅。私は係員に呼ばれました。パイプ椅子に寄りかかりながら私のスーツケースの中が映し出される画面を見ていた黒人の職員は横柄な態度で「これは何だ」と指さします。そこには綺麗な女性の顔が見事に映し出されていたのです。当時私はかつら屋さんで働いており、ロスにある女性用ウイッグを販売する子会社を訪れ、そこで大変気に入ったマネキンを購入。大事な顔を傷つけまいとそれをスーツケースにいれていたのです。殺害した女性の頭部だけ切り取って持ち出そうと思われたのでは心外ですからこれはマネキンヘッドだと説明しました。でも彼が指差していたのはマネキンの横にある格子状の中に見える数個の丸い物体だったのです。私はそれがいったい何なのかすぐに理解できませんでした。荷物を詰めたのは私です。でもわからない。マシンガンの弾丸にも見えないこともありません。私は何者かに嵌められたのか、いやな汗が全身からにじみ出てきました。しびれをきらした彼は冷たく「開けろ」とひとこと。キーを差し込み開くと美しいマネキンの横に小さな段ボールが。舞い上がっていた私はその時点でもその中身が思い出せません。男は再度「開けろ」とひとこと。絶対に自分では開けないのです。男のことを『この臆病者!』と思いながら箱をあけるとマニュキアの瓶が数本、ぶつかりあって破損しないように区切られた箱の中にありました。ロスにくる前、NYで美容ショーを訪れその会場でお土産にと格安の珍色マニュキアを購入していたのです。私はその箱の周囲にあった箱も次々に開けろと命じられました。中身は女性用の金髪ウイッグです。奥様用に購入したものもありましたしサンプル品もいくつかありました。でも彼にしたら男の私が女性用金髪ウイッグをもっていること自体異様に思えたことでしょう。彼がゲイなら私は手でも握られていたかもしれません。彼の指示に従い私はもうひとつのスーツケースもあけました。中には子供の土産に買った腕を引っ張ると口からマーブルチョコが飛び出す人形が。またいくつかのウイッグも出てきました。仕事だから仕方ありません。JALのカウンター前ですから私の背後にはチェックイン待ちの日本人がいっぱい。私は彼らに異常者のような目で見られている気がしました。検査が終わると彼は「Thank you」とひとこと。そしてまた別の乗客の検査任務に戻ったのです。私はひっちらかった荷物を放置してその場を立ち去りたい心境でした。
現在旅券にはICチップが内蔵されているそうで、チップを損傷しないためにでしょうか中ほどに厚紙が挟み込まれており、絶対に折り曲げないでくださいとの注意書きがあります。チップには氏名、生年月日、顔写真が記録されているとか。でもそれ以外の個人情報もインプットされているに違いありません。私の場合「各国税関職員へ、この者もスーツケースは必ず開けさせること。面白いものが見つかるよ」とでもインプットされているのでしょう。

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