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とんかつに負けた日 [ほっこり]

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老若男女を問わずランチは1日の楽しみのひとつだと思います。でもそれが悪夢のプロローグになることもあるのです。
数年前、漫才コンビの次長課長ではなく職場の本物の次長課長と3人で昼食をとるために会社を出たときのこと。課長がおいしいとんかつ屋があるのでそこへ行きましょうということになり、歩いて10分ほどかけて新宿駅近くのSという店に行きました。「ここのとんかつは絶品ですから」という課長の口上の後に運ばれてきたとんかつは今までにみたことのない姿。とげとげしていて何かが突き刺さったような衣でした。普通のとんかつの衣にはパン粉を使いますが、その店では細切りの食パンを衣にしているとかで、そうした風貌になっていたようです。衣で唇を切りはしないかと口へ含むにも覚悟がいる外観でしたが、思い切って食べてみると中身はその外観とは対照的にとてもソフト。確かにおいしいとんかつでした(残念ながら今はもう味わうことができないようです)。3人ともきれいに平らげると、次長が「この程度で絶品などといってもらってはこまる。もっと旨いとんかつ屋を知っているからそこへ行って食べ比べてみよう」ということになったのです。私は連日のとんかつランチには抵抗があったので、来週にでも決闘の日を設定してくれるとありがたいと思っていたのですが次長の指令は冷酷でした。「比較するには、この味を忘れないうちがいい。今夜行こう。」
午後7時、就労時間終了とともに私たちはオフィスを後にし、地下鉄に乗っていざ決戦の場に。Mというそのとんかつ屋は日比谷のオフィスビルの地下で営業していました(こちらも今はその地にありません)。幸いラストオーダーに間に合い3人とも昼と同じくロースかつを注文。ぶつが運ばれてくるまで、今度は次長の講釈に耳を傾けたわけです。条件を公平にするためアルコールもなし。勤め帰りのサラリーマンが真剣にとんかつを食す姿を店の人は異様に思ったことでしょう。でもミシュランの覆面調査員ではと疑ってはいなかったようです。デザート等、何もサービス品がつかなかったので。箸で切れるほど柔らかいと評判だというMのとんかつを食べ終えると、次長課長は第三者である私に最終ジャッジを求めてきたのでした。
私がどういう裁定を下したかは残念ながら覚えていません。でも1時間以上、胃に不快感をいだきながら電車に揺られ帰宅すると、我が家の食卓にとんかつが鎮座していていたことは鮮明に記憶しています。そして、連絡無しで遅くなったらどんなに帰宅が遅くなっても用意された夕食は必ずその日に食べるという我が家の掟に従い、私がそのとんかつも残さず食べたということも。翌日が健康診断の日だったら、医者が目を疑うとんでもない数値がでていたに違いありません。

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