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猫のお話し [楽]

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「この娘を飼ったら来年は必ず大学受かるわよ」魔女の言葉の誘惑には勝てず、ある年の瀬、我が家に猫がやってきました。掌にひょっこり座れるほど小さな猫でしたが、私の抱いていた猫に対する常識をことごとく打ち砕く凄い猫だったのです。
当時車のCMで流行っていたケンメリからいただきその娘はメリーと命名されました。父にとって所持金ゼロで建てた(もちろんその分月々のローン支払いは大変だったはずですが)ことが自慢だった私の住む邸宅はアメリカのホームドラマの舞台となるお屋敷のように全館セントラルヒーティング。普段誰も利用していない部屋も含め全部屋、廊下階段も冬でも寒い場所はありませんでした。それが成長を早めたのでしょうか、1,2週間もたたないうちになんとさかりになったのです。異様な声を発する、糞尿をところかまわずする、やりたい放題。さらにセントラルヒーティングでこたつがなかったからでしょうか、猫はこたつでまるくなるなんてとんでもない、ひまさえあれば家じゅうを猛スピードで走りまわっていました。彼女の興味をひくべく私が長い紐をひきずって走りまわっていたことも一因だったのでしょうが。ひとしきり運動するとドテッと廊下に倒れこみ犬のように舌をだしてハアハアと荒い息をするのです。また階段を使用してはいけないと思っていたのか、スパイダーマンのように階段横の壁につめをたてて二階に這い上がっていました。邸宅を売却する際、父はあの壁のせいで査定額がかなり低くなったと嘆いていたのを思いだします。私が1年余り家をあけることになり面倒をみることができなくなるので=メリーにとっては面倒をみてもらったという意識は全くなかったでしょうが=避妊手術のため病院にいったときのことです。魔女の息子の手を借りて小さなゲージに入れて車で病院に向かいました。でも何か恐ろしいことにまきこまれると動物の勘で身の危険を察知したのでしょう。病院に到着する寸前、ゲージの隙間から車内に飛び出したのです。しかし車のドアは開けられないこと、窓だって突き破れないことに気づいた彼女は車内の床からフロントグラス、天井、リアガラスとぐるぐるとものすごい形相で走り続けたのです。車内には彼女の毛が無数に舞っていました。当時YouTubeが存在すればその映像だけでも相当稼げたに違いありません。もちろんその日の手術は断念。帰宅後、彼女も慣れない狭い空間で運動したことにより心身ともに疲れたのでしょうか、一昼夜ベッドの下に隠れたまま私の前に姿を現しませんでした。そんな彼女ですが、私が1年あまりいなくなった当初、父が私を追い出したのだと思ったらしく父に歯をむいて威嚇したり、爪をたてて攻撃したりしていたそうです。もっとも1年後帰宅した際は、背中の毛を逆立てて私を警戒していましたが。きっと忘れたのでしょう。
そのメリーは結構若くして癌で他界。魔女も昨年93歳で旅立ちました。今頃魔女の膝の上でゴロゴロと喉をならしながら魔女の囁きを聴いているのかもしれません。「貴女を飼ったからって大学に受かるわけないじゃないねえ、甘いわよね貴女の飼い主さん」

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